(Report) Vol.21 子どもの自主性を育てる(子どもと心が通じ合うコミュニケーション①)

2017年3月12日、0-6歳子ども教育のプロフェッショナルである川口由佳子さんによる、 全7回の子育て講座第1回を開催しました。 

連続講座のタイトルは 

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子供と心が通じ合うコミュニケーション 

〜子供と過ごす「今」を、心から幸せと思う毎日を創造する〜 

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というもの。 

これまで数十年かけて築いてきた経験、価値観、背景はそれぞれ違うのだから、 全てのお母さん、お父さん、全てのお子さんに当てはまる正解はありません。 子育てに正解はない。だから自分で見つけ出すしかない。 

でも、どうやって・・・? 

由佳子さんがその道筋を見せてくれた、深い内容の講座となりました。 

「どうしたら子どもの長所を伸ばすことができるのか?」 

知りたい人は多いと思います。 

しかし、私は由佳子さんの講座を受けて 「

そもそも、私は、たくさんあるはずの我が子の長所の一部しか知らないのでは・・・?」 ということに、ハッとしました。 

由佳子さんの子どもの長所を発見するために、「観察をする事が大切」と伝えてくれたのですが 私の「観察」という概念を、はるかに超えていました。 

実際に会場にいるお子さん一人一人に対して実演してくれたのですが、 その観点の細かさ、着目点のレベルの高さ、視野の広さには目をみはるほど。 

表情は? 

手の動かし方は? 

どんな座り方をしてる? 

何を言っている? 

どんな気持ち? 

どんな事を伝えようとしてくれている? 

由佳子さんのフィルターを通してみる子どもたちは、 可能性にあふれ、成長したい挑戦したい学びたいという意欲にあふれているように感じました。 

そしてここまで丁寧に子どもの行為を、細かく観察することで初めて、 

・子どもが「今」できることは何なのか 

・何に興味があるのか 

・子どもが何を考えているのか 

・なぜその行為をしているに至ったか ということがわかりました。

 子どもを観察すると、心に余裕が生まれます。 心に余裕ができると、親の言葉がけが変わります。 要約すると以下のサイクルです。 

子どもを観察したいという意欲をもつ 

→親が心に余裕を持つ努力をする 

→子どもを観察する 

→子どもを理解する 

→親の子どもへの言葉がけが変化する 

→子どもがイキイキする 

→親の心に余裕が生まれる 手助けをするタイミングが変わったり、待ったりするかもしれません。 

これまでと違うアプローチをするかもしれません。 

興味がある方法へ遊びを広げるサポートをすることができるかもしれません。 

なぜそれをやっているのか?理解できるようになると怒る必要がなくなったり、 これまで以上に子どもを信頼することができるように、 今まで以上に愛おしく感じると思います。 

少し語弊があるかもしれませんが、 この講座を受けて楽になるのは、子ども以上に、実は親なのです。 子どもと理解し合えるようになることで、お互い意思疎通がしやすくなり、子どもが話を聞いてくれるようになります。 「子どもを固定観念なしにみるということは、こういうことか・・・」と 目の前で見せてくれる由佳子さんの世界観に、引き込まれ大きな衝撃を受けました。

 実際、当日の会場であった、ひとつの例を紹介したいと思います。 

今回お母さんと参加してくれた2歳の女の子Aちゃんは、お母さんの持ち物に興味津々! お母さんのペンケースのチャックを開けて、ペンを何本も取り出し、机を太鼓に見立ててドンドンと叩き始め、ペンを床に落としました。 

こんな時、あなたなら子どもになんて伝えますか? 

「ペンは書くものでしょ!」 

「何本もペン必要ないでしょ?」 

「机を叩かないで!」 

「落とすのをやめなさい!!」 

そんなことを言ってしまうかもしれません。 (Aちゃんのお母さんの発言ではありません) 

その時由佳子さんはAちゃんにこんな言葉をかけました。 

「ペンケースのチャック、開けられたね」 

「ペンケースのチャックを開けたら、横に広げられるって分かってるんだね」 

「叩くと音がするね」 

「いろいろな色があるね」 

その子供が目を輝かせて取り組んでいる行為を、 親の都合ですぐに止めさせるのではなく、 何故それをしていて、何に興味があるのかを引き出し、寄り添う言葉がけをして観察をしていました。 由佳子さんはAちゃんの行為を、こんな風に説明してくれました。 

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【ペンの目的は、書くことだけ】というのは、大人が決めたことです。 

子どもはあらゆることを「試したい」と思っています。 

叩くとどんな音がするの? 

落としたらどうなるの? 

どんな形をしているの? 

ペンを落とすという行為自体に、危険はありません。 

口に入れそうになったり、危険と判断して止める。 

「ここまで」とラインを引くだけです。 

やりたいことをやらせてあげることが、 子どもの興味を発見し、今できることを見つけ、長所を伸ばすことにつながります。

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子どもは、【親が想像しうる枠】を超えて、 沢山のことに興味を持ち、今自分ができることを試しています。 そのアプローチは、子どもの数だけあり、親の決めた一般的に正しいとされる枠、想像できる範囲にはおさまりません。 そのことを、わかりやすく伝えるため、 由佳子さんが紹介してくれたひとつの詩があります。 (下の写真参照) 

長い詩で、深いメッセージが刻まれた詩なのですが、 要約すると「子どもが100人いれば、100通りある」というもの。 子どもを、一般的な枠に当てはめず、ありのままで見つめることを深く心に刻ませてくれます。 多くの子育てに関する本やセミナーでは「やり方」が、示されています。 

すると、親の持っている「考え方」によって、伝わるメッセージがガラッと変わってしまう。 「やり方」だけ学んでも、「考え方」を変えなければ、これまでと何も変えることができません。 

子どもを 

・何も知らない 

・常に助けが必要 

・言葉が喋れないからコミュニケーションが取れない 

そういう存在と思って接するのではなく、

・成長したいと思っている

・人と関わりたいと思っている(生まれた瞬間から)

・何でも知りたいと思っている 

・チャレンジしてみたいと思っている 

・可能性に満ちている 

そう思って関わることもできます。 

子どものイメージを高く持つ事がどれだけ大切なことかについては、 2016年10月、2017年1月に開催したシェアリングの時にも、繰り返しお伝えしてくれましたが、 親の子に対する対応が、ガラリと変わることを、具体的な方法と考え方を交えながら、目の前で見せてくれました。 

では、子どものイメージを、ポジティブなものに変換するとどんな事が起きると思いますか? 

全てにおいて、親と子が幸せになれる「いい循環」が生まれます。 まず、言葉がけ、接し方が変わります。 そうすると、子どもを観察する余裕が出てきます。 すると、ありのままを認め、信頼する自信がつきます。 子どもを尊重しながら、必要な時にサポートするタイミングを理解できます。 子どもは常にサポートがいる存在ではありません。 

なのに、必要以上に手を貸し、子どもが選択する機会を奪っているかもしれません。 自信をつける機会を奪っているかもしれません。

子育てをしていると直面する 

「なんで、〜してくれないの?!」という悩みやイライラ。 

これがなくなり、子どもがみるみる変化していくことに、驚くと思います。 私の個人的な感想ですが、講義後からの息子の変化に、驚いています。 自分の考え方の変化が、ここまですぐに結果として現れることに、喜びの気持ちでいっぱいでした。 そして、皆で自分の子供時代を振り返ります。 

その時の自分の気持ちにタイムスリップすると、 

「あんなに楽しいと思っていた泥遊び、汚いからってさせてないなぁ・・・」とか、 

「黙々と1人で遊ぶのが好きだったのに、自分の子にはお友達と遊ぶのを強要してたかなぁ・・・」とか 

「自分だけのお母さんでいて欲しかったのに皆に優しくするお母さんに対して葛藤があったなぁ・・・」など。 

子どもの気持ちに寄り添う、感情が見えてきます。 そして「今、あなたはどんなイメージを持っているか」という、 自分の現在地を知り、見直す時間がありました。

 ・子どもに対して「こう言ってしまう」「こうしてしまう自分が嫌」ということはありますか?

 ・その言動をしたことで自分はどんな気持ちになりますか?

 ・言われた、された自分・子どもはどんな気持ちになりますか? 

また

 ・「うちの子〜なんだよね」と人に話すときによく使う言葉はありますか?

 ・「あなたの子はこうだよね」と自分の両親から言われたことはありませんか? 

・「この子は〜だから」と、無意識に思っていることはありませんか? 

例えば、あなたが「うちの子は落ち着きがない」と悩んでいるとします。 

それでは【落ち着いている】という言葉をどういう定義で使っているか考えてみてください。

 ・長時間椅子に座っていることでしょうか?

 ・走り回らないということでしょうか?

 ・騒がないということでしょうか? 

それをしない子どもは、居ないと思います。 

子どもが本来継続できる集中力は年齢に応じて伸びると言われていて 1歳だと『1分』、2歳だと『2分』、3歳だと『3分』だそうです。 

短いですね。笑 

言葉の定義をあらめて見直すと、子どもを「落ち着きがない子」と決めつける必要なくなります。 「今、何がしたいか?」という、子どものありのままの姿を見て、サポートする事ができるようになります。 うちの子は「アクティブに動き回ることが好き」だから、それをサポートする手段を考える。 具体的に、定義を見直し、イメージを変換してみてください。 私たちの視点を広げ、イメージを変換していくと、行動が変わり、言葉がけが変わり、 親としての子育てに関する「考え方、軸、価値観」を、 ポジティブなものは強化していくと、素晴らしい事実が見えてきます。 イメージを転換する時に必要なのが、 言葉に対して持っている定義を明確にすること。 そして夫婦で共有すること。 

由佳子さんは講義の中で 「あなたにとっての〜とはなんですか?」というイメージについて、度々質問をしました。

 ・幸せってなんですか?

 ・コミュニケーションってなんですか?

 ・子どものイメージはどんなものですか?

 ・母親・父親のイメージはどんなものですか?

 ・育児のイメージはどんなものですか? 

少し手を止めて、考えてみてください。 よければ、紙に書き出してみてください。 

それらのイメージを確認することで、 自分にとって、パートナーにとって、幸せな「子育ての軸」を定めることができます。 あなたに「子育ての軸」はありますか? 軸があれば、いろんな情報に触れても、ぶれることはありません。 軸がなければ、振り回されて、一喜一憂したり、人からの意見に悩んだりと、ブレてしまいます。 

軸をわかりやすく言い換えると、 

【あなたの子育てのゴールはなんですか?】 

この答えは、変化してもいいもので、どんどん高めていくものです。 この答えは、自分が迷った時に戻ってこれる軸となります。 是非、夫婦で話してみてください。 我が家でもゴールについて話し合いましたが、 見えてこなかった新しい発見があり、これからの子育ての指針が定まりました。 

由佳子さんの講義は、自分で答えを導き出す道筋を示すスタイル。 頭をフル回転で使いながら、自分の普段している事、子どもが感じている思い、その解決策に、皆さん自らが気がついていった時間になったと思います。 今回の講義は私のための私だけの「子育ての教科書」を作っている感覚がありました。 子育てに悩んだ時に見返したい、そんな宝物のノートになることと思います。 由佳子さんのお話を聞いて得られた知識や考え方。 それは各々の普段の生活に戻って、学んだことを実践して得られた経験だけが、 自分のものとして根付いていきます。

7回の講座を通じて「吸収➡︎経験➡︎根付く」このスパイラルを回していけたらと思います。 由佳子さん素晴らしいお話をありがとうございます。 ご参加いただいた皆様、たくさんのシェアがあったからこそ、学びや気づきがたくさんありました。 皆さんのお陰で素晴らしい時間となりました。 ありがとうございました。


(Writer: Naoko Yasuda)