2017年8月6日「子どもの自主性を育てる」というテーマにて、0-6歳の子ども教育のプロフェッショナルである川口由佳子(Yukako Kawaguchi)さんによる、第4回目子育て講座を開催しました。
- 子どもに自分で考え、行動できる子になって欲しい
- 自分で問題解決できる子になって欲しい
- つい子どもに手出し、口出しをたくさんしてしまう
- 子どもが一人遊びができなくて悩んでいる
- 子どもにとって良い声かけがどういうものかわからない
- なかなか子どもを「待つ」ことができない
親なら誰でも思うこんな子どもへの思いや悩み。
今回も、参加者から事前にヒアリングした悩みを盛り込みながら、由佳子さん自身の体験も踏まえ、とても具体的な対応策が聞ける講義となりました。
子どもの自主性を育てるために大切なこと。
それはとてもシンプルで、でも意識しないとなかなかできないことでした。私自身も今まで「自分はできている」と思っていた項目もありましたが、具体的な内容を聞くと実際には全くできていなかったことがわかりました。
自分の子育てについて、改めて深く考えさせられ、改善点がわかり、それと同時に「そうか!そうすればもっとできる!」と前向きに捉えられる素晴らしい講義。
今回私が学んだことを一部ですがシェアしたいと思います。
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まず、子供は生まれながらに自主性を持っていると理解する
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過去に、「自分でやりたかったのに!」と思った思い出はありますか?
私は母の料理のお手伝いをしていて、千切りなど難しい作業を最後までやらせてもらえなかったことを思い出しました。その時はやりたいという私の気持ちを受け取ってもらえなかったこと、挑戦させてもらえなかったことに、とても憤ったのを覚えています。
由佳子さんはその時の自分の気持ちを大切にしてくださいと伝えてくれました。なぜなら、自分の子どももそう感じているかもしれないから。
生まれたばかりの子どもには感情や自主性はないと思うかもしれません。しかし、子どもは生まれてくる前からすでに自主性を持っています。
自然分娩をしたママならピンと来るはず。
生まれる時間を決めているのはママではなくて子ども自身です。
つまり生まれる瞬間からすでに自主性があるということ。
子どもは準備さえ整えば、あとは自分で行動する能力を生まれながらに持っています。だから親にできることはそれをサポートしてあげることだけなのです。
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親が子どもにあげられる最高のギフトは?
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事前のヒアリングで、子どもの自主性を育てるためにしていることは何ですか?という問いがありました。
参加者それぞれに回答は異なりますが、由佳子さんはそれは全て正解で、すでに皆さんはできているとおっしゃいました。
・すぐに答えを言わずに子どもに考える時間を与える
・子どもがやりたいと言ったことはどんなことでも自由にやらせる
などの意見がありましたが、子どもに「時間」と「自由」と「信頼」を与えること。
そして親自身も「子どもの成長を長期的に見る時間」、「決める自由、選択する自由を子供に譲る」、「できると子どもを信頼する」という視点を持つこと。
そして子ども自身が「自分でできた!」と思うことが増えれば、子ども自ら次は自分からやってみよう!と思うことができる。
それを繰り返し繰り返し、日常の中で経験させてあげることが、子どもの自主性を保ち、育てるために必要なのだそう。
そしてそのために必要なことは
『見守ること』そして『待つこと』。
この『見守る・待つ』が子どもに与えることはたくさんあるといいます。
- 子どもが自ら考える時間
- 子どもが自分の能力を信じる力
- 子どもが自分で判断する機会
- 子どもの想像力を高める
- 子どもが情報と情報を繋げる機会
自主性や、考える力、自己肯定感、感受性など、まさに子どもに与えてあげたいものばかり。
そしてこんな最高のギフトをプレゼントするために必要なのは『見守る・待つ』だけ!
ここまで話を聞いて、簡単だし、むしろ現時点でできてる!なんて思ってしまった私。
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転んでも自分で立ち上がれる子どもに
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あなたは子どもが転んだ時、どんな対応をしていますか?
すぐに抱き上げ「大丈夫、大丈夫!痛くない〜痛くない〜」と、ヨシヨシしていませんか?
では逆に、いま大人となったあなた自身が転んだとします。
その時、自分よりも2倍くらい大きい巨人に、転んだ瞬間サッと抱き上げられて、同じようにされたらどう思いますか?
「まずは自分で怪我の症状を確認させて欲しい」
「共感して欲しい」
「見ないで欲しい」
参加者からはそういった声が上がりました。
もしかしたら子どもも同じかもしれません。
転んですぐに抱き上げられたら、子ども自身もきっと何が起きたかわからず、逆に怖い思いをするかもしれません。
実は、子どもが泣いた時や転んだ時は、自分自身で考えて解決する絶好のチャンスなのです。
由佳子さんも1歳の娘さんが階段から6段転げ落ちたことがあったそうです。
とっさに声をかけたくなるのをグッと堪えて・・・黙って見守ったそうです。
すると娘さんは15秒くらい黙って動かず、しばらくすると、「うー」と言いながら上半身を起こして、声をあげて泣いたそう。
そこで駆け寄って抱き上げたそうですが、落ちて15秒の間、
「自分に何が起きたのか」
「私は動けるのか」
娘さんは考えたに違いありません。
そして自分で状況を理解したからこそ、由佳子さんに抱き上げられてすぐ泣き止み、またすぐに元気に遊びだしたそう。
すぐ抱き上げないメリット。
それは、
- 子どもがどの程度の怪我をしているか把握ができる
(一人で立てるのか、手足がちゃんと動いているか)
※言葉を話せないお子さんなら余計に、すぐ抱き上げないことは重要です
- 子どもが自分で何が起こったのか判断する時間を作る
- 子どもが自分で感情を消化する時間を作る
(すぐ泣き止む、次の行動に移れる)
ということにつながります。
子どもが転んでもじっと見守る、自分自身で立ち上がるのを待つ。
「痛い思いをしたならまず慰めないと・・・」という親の気持ちもありますが、長い目で見れば黙って見守り、自分で解決出来るようにサポートしてあげることが子どもにためになるはずです。
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おもちゃの取り合いをしてしまったら?
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親なら必ずある感情。
もう一つは「◯◯な子になって欲しい」というもの。
私も事前質問の中で、「おもちゃの取り合いになっても、自分から話し合って解決できる子になって欲しいと思っている」と答えました。
由佳子さんはこの「親の期待」はみんなあるものだと言います。
でも、人に対しての思いやりの心は、親が子どもの気持ちを認めて共感してあげることで育つ「自己肯定感」から生まれるものだそう。
大人もそうですが、自分を大切に思うことができて初めて、人に優しくなれるものです。
そしてそういう子どもに育つために親ができること。
それも「見守る・待つ」こと。そしていつかできると子どもを信じる気持ち。
例えば、子ども同士でおもちゃの取り合いをして泣いてしまった時、あなたはどのように対応していますか?
泣かせてしまった方は「おもちゃを返しなさい」「謝りなさい」というかもしれません。
泣いてしまった方は「大丈夫」「違うおもちゃで遊ぼう」というかもしれません。
でもできたら、子どもたちだけに任せてみませんか?
いつも親が介入して場を解決していると、本当の子どもの能力を見つけてあげることができないかもしれません。
もしかしたら思いもよらない結末が待っているかもしれません。
泣くのも、諦めるのも、譲るのも、交換するのも、親に頼るのも、子どもたちが考えてそれを選んだなら、それは今の時点でOK!
大切なのは子どもに「自分で考える」時間を親が与えてあげることなのです。
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子どもの一人遊びをサポートするには
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以前は一人遊びができた息子が、最近突然「ママと遊ぶ!」ばかりになって、最近とてもストレスを感じていました。
しかし、由佳子さんが教えてくださった一人遊びのサポートのポイントを実践したところ、早速効果が!
ポイントは
- まずは安心安全な環境を作っておく
- 静かに座って留まり、心は近くにあるよという安心感を与える
- 遊び方に口出ししない
- 参加はできるだけせず、観察し、言葉だけで反応する
- 子どもが何もしていなくても遊んでいると捉える
- 子どもを楽しませようと頑張らない
いつもお気に入りの車を私に渡して、あっちで遊ぼう!という息子ですが、講義後、ついて行かずに「あっちでママと車で遊びたいんだね、そっかそっか」と反応だけして動かずにいました。
最初は私を連れて行こうとしがみついて泣いていた息子ですが、「いやだね、そうだね」と言い見守っていると、自然と泣き止み、自分から私の元を離れて一人で楽しげに遊び始めました。
そして時折息子の言葉に反応すると、嬉しそうに一人で遊び続けてくれました。
メリハリが大事と教えてくださった由佳子さん。一緒に遊ぶときは「ママこれから一緒に車で遊ぶよ!」と声をかけてから集中して遊びました。
1日の中でそうしてメリハリをつけて遊んだことで、息子自身もとても満足しているように見えました。
親から離れていくのではなく、子どもの方から離れていくのを待つこと。それだけでこんなに納得して一人で遊ぶのか・・・と目からウロコでした。
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質の良い声かけとは?
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子どもの言葉の早い遅いや、話す話さない、など、子どもの会話の発達に関して、親なら気にしてしまいがちですよね。
「とにかくたくさん声かけしないと」
「もっといろんな言葉や情報を教えてあげないと」
参加者からも「母親なのだから子どもにたくさん声かけしないといけないと思っていた」という意見があり、多くの人が共感したと思います。
しかし、由佳子さんは子どもの自主性を育てるためには、時には知らないふりをしたり、事実だけを伝えることが大切だと言います。
「これは何色?」「これなんていう名前?」といった『テスト』を無意識にしていませんか?
でもそこで得られるものは「この子は黄色を知っている」と親が安心できることだけではないでしょうか。
もし、子どもが夢中で絵を描いて想像力を働かせている時、親が「これ何色?」と質問したら、子どもの想像力はそこで遮断されてしまいます。
それが何色だったか考えることに頭を使ってしまってはもったいないと思いませんか?
それよりももし声をかけるなら、「黄色い車があるね」など子どもの描いた絵の事実だけを伝えたなら、「そう、この車はね・・・」とさらに子どもの想像力は膨らむかもしれません。
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あなたは子どものことを待てていますか?
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子どもに「ちょっと待ってて」とよく言う人、という由佳子さんの問いかけにほとんどの人が手をあげました。
「ではみなさんは子どものことを待てていますか?」
これが待てていると思っていたら大間違い。
例えば、親が子供に質問をして、子どもが考えて答えられるまでの時間は12〜15秒が平均だそう。
由佳子さんも娘さんに「お風呂に行くよ」と声をかけて、娘さんが自分から「来るまで」お風呂場でひたすら待ったそうです。
娘さんは、やっと自分でお風呂場にやってきました!その時間を実際に計ったら、なんと「12分間」待っていたとか・・・!
自分が思っている以上に「もっと」待たないといけないことがはっきりわかりました。
実際に講義後、お散歩からなかなか帰ろうとしない息子を、少し先で止まって黙って待っていました。
待ちながらいつもならそろそろ抱き上げに行くなぁと思いながらも、じっと待ちます。
「8分」で自分からきました!
その後帰りの道中、何度か息子が寄り道をしましたが、同じように先でじっと待っていたら、必ず息子から来てくれることがわかりました。
今までは「私が連れて行かないと来ない」と心のどこかで思っていたのだと思います。彼を信じて待ちきれなかっただけでした。
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子どもにして欲しいことは、まず自分がやる
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もう一つ、由佳子さんが教えてくださったことに「モデリング」というものがあります。
これは、子ども自身が「やりたい」と言い出すまで、まずは親がやり続ける、見本を見せ続ける、というもの。
トイレトレーニングや食事のマナーなどにも使えます。
冒頭の「子どもは準備さえ整えば、あとは自分で行動する能力を生まれながらに持っている」ことからもわかるように、大切なのは子ども自身からの「やりたい」という気持ちを育ててあげること。
そして子どもが「やりたい!」と言った時、それを全力でサポートしてあげられる準備を親もしておくこと。
いくら口で言っても子どもは動きません。
これは子どもの時の気持ちを思い返せば誰もが納得するのではないでしょうか。
親に「やりなさい」「やってみる?」と言われてやるより、自分からやりたいと言ったものは一生懸命取り組みませんでしたか?
親がまずお手本を見せること。
そして子どもが考える時間を与えること。
子どもから言う機会を奪わないこと。
ひたすら見守り、待ち続けること。
そしていつかできると全力で信じること。
由佳子さんの教えてくださったことはとてもシンプル。
でも、ついつい自分のペースを優先したり、世間体を気にして「いわゆる良いママ」の対応をとってしまったり、ここまでは子どもはできないだろう、と決めつけてしまったり…。
言葉で「見守る」「待つ」だけ聞くと、私はできていると思ってしまうけれど、実際に講義に出て、由佳子さんを通してじっくり子どもの気持ちと可能性を紐解いていくと、私はまだまだだったなと素直に感じることができます。
由佳子さん、そして参加者の皆様、今回も素敵なシェアをありがとうございます。
学びが多く、心が軽くなる、そんな素晴らしい講義でした。
まだご参加したことがない方も、ぜひ一度、お子さんと一緒に学びに来てください。きっと子育てがもっと楽しく、そして楽になると思います。
Writer : Hiromi Oka
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