(Report) Vol.27子どもの考えを理解する(子どもと心が通じ合うコミュニケーション③)

2017年7月2日「子どもの考えを理解する」というテーマにて、子育て講座を開催しました。 講師をしてくれたのは、0-6歳子ども教育のプロフェッショナルである川口由佳子(Yukako Kawaguchi)さん。 

☑️子どもが本当に伝えたいことがわからない 

☑️泣く・怒る子どもの感情がどうしたら収まるのかわからない 

☑️泣いている時に「悲しいのね」と肯定するだけで終わってしまう 

☑️子どもの考えを理解し、子どもに「理解されている」と感じて欲しい そんなことを感じているお父さん・お母さんが集まりました。  

今回は前回以上に「具体的」で「実践的」な、熱の入った講義。 沢山の新しい視点と気づきのある素晴らしい時間となりました。 事前に参加者からヒアリングした悩みに対する、 由佳子さんの回答を盛り込むスタイルで開催した今回の講義。 自分の回答でなくても「うちもそうです!」と参加者同士が共感し合いながら、それぞれの悩み・回答に真剣に耳を傾けていました。 

⭕️ 子どもの要求に応えているはずなのに、泣き止まない時 

⭕️ 怒っている、泣いている理由がわからない時 

⭕️ 子どもが自信を失っていると感じる時 

⭕️ 子どもは自分でやりたいが、危ないのでやらせてあげられない時 

⭕️ 子どもがパニックになってしまい、思いが届かなくなってしまった時 ⭕️ 子どもがお友達に思いを伝えられず、手が出てしまった時 

⭕️ ~したい、してほしいけど、したがらない時 

⭕️ 兄弟喧嘩で子どもが起こったことの報告・助けを求めに来る時 「こんな時、子どもの気持ちがわからなくなり困ってしまう・・・」 そんな共感する項目、必ずひとつはあるのではないでしょうか。 


この場面でどう対応するのか? 由佳子さんの示してくれた解決策は、難しいものではありません。 

でも、私は全くできていなかったもの。 

そして我が子に試すことで、驚くべき効果を発揮したものでした。  

以下、由佳子さんから伝えてもらったことをシェアしたいと思います。 同じ悩みを抱えていらっしゃるなら、きっとお役に立てる情報となることと思います。 是非、ご一読ください。 


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◆共感されたい気持ちは、大人も子どもも同じ 

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まず初めに、一つ質問をさせてください。 あなたはどんな時に「人から自分の考えを理解してもらえた」と感じますか? 【共感してもらえた時】 【言葉を言い換えて、自分の意見を伝えてくれた時】 参加者からはいろいろな回答が出てきました。 でも、自分の子どもを目の前にした時、どれほど私たちは【共感】しているでしょうか? もしかすると、共感する前に「~しなさい」を先に伝えていないでしょうか? 大人と子どもの違い。それは、早く生まれたか遅く生まれたかだけです。 やってもらって嬉しいことと嫌なことは同じ。 いつも「自分はどうされたいか」という言葉を問いかけながら、 以下のメッセージを受け取ってもらえたらと思います。  

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◆キャンディーが欲しい!と言われたら・・・ 

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想像してください。 あなたの子どもが「このキャンディーがほしい!」と言ったとします。 あなたはキャンディーを与えたくありません。 その時、どんな言葉をかけますか? 「ダメ!」(感情を否定) 「あっちに~があるよ!」(話題を変え、気をそらす) という回答が、参加者から出てきました。 でも由佳子さんの回答は・・・ 「キャンディーがほしいのね」でした。 参加者からはどよめきが起こります。 「そんな風に言ったら、買わないといけない・・・」 「キャンディーを買うことを許すことになってしまう・・・」 でも・・・よく考えてみてください。 

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⭕️ 子どもがとった行動を認めること

⭕️ 子どもが直面した事実を認めること 

⭕️ 子どもの感情を認めること 

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そして、 

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子ども行動を 

⭕️ 許す 

⭕️ 同意する 

⭕️ 大目に見る 

⭕️ 受け入れる 

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これは、全く違うことなのです。 子どもが求めていることは 「キャンディーを食べていいよ」という【同意】よりも 「キャンディーがほしい」という望みを【理解】してもらい【共感】し、受け入れてほしいだけなのです。 


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◆兄弟喧嘩での親の役割は、問題解決ではありません 

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兄弟喧嘩が起こると、子どもの間に入って親が問題解決をしていませんか? 

どちらかを叱らないといけないと思っていませんか?  

ここでも、必要なのは望みを理解し共感すること、ただそれだけなのです。 

 想像してみてください。 

「おもちゃを取られた」と泣きながら報告してきたお兄ちゃんに対して、 あなたなら、どんな言葉をかけますか? 

ポイントは、子どもがとった行動を認め、事実を並べること。 親が気持ちを決め付けないで感情を整理することです。 「おもちゃ取られて、嫌だったね」という回答が参加者からもありましたが、取られて「嫌な気持ち」かどうかは、親が決めつめているだけかもしれません。 

母「おもちゃ取られたんだ。どんな気持ちだった?」 

兄「嫌だった」 

母「嫌だったんだね」 

母(妹に対して)「お兄ちゃん〜ちゃんにおもちゃ取られて嫌だったんだって。お兄ちゃんと遊びたかったの?」 

妹「うん」 

母「どうしようか?」 

妹「お兄ちゃんの所行ってみる!」  

お母さんは【問題解決】が役割ではありません。 あくまで【問題解決のサポート】です。 自立して考えられる力を身につけるために、質問をして自分の力で答えにたどり着けるよう誘導をするだけです。 兄弟喧嘩で「お兄ちゃんなんだから」という言葉をよく耳にしますが、 「年上だから、年下だから」「男だから、女だから」ということは関係なく 親は是非中立に話を聞いてもらえたらと思います。 ちなみに「叱る」ということには、何の意味もありません。 例えば、何か失敗をした時、会社の上司から「5年も会社にいるのにこんなこともできないの?!」と言われたら、やる気をなくしますよね・・・?  

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◆すぐに問題解決しようとしない 

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例えば、子どもが「本!」と言ってきたら、あなたはどうしますか? 

以前の私は、その本を即座に「はい」と渡していました。 

「子どものリクエストにすぐ対応してあげたい」と思っていました。 でも・・・ 子どもは本を自分で選びたかったのかもしれません。 自分で取りたかったのかもしれません。 とって欲しかったのかもしれません。 子どもは「気持ちを探ってもらえると落ち着く」そうです。 親がすぐ目の前の問題を解決しようと、答えを提供することは 実は子どもの気持ちを満たすことにはつながりません。 自分で解決できる子どもに育たないといいます。 子どもにとって必要なことは、自分で答えにたどり着ける力をつけることです。  

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◆生まれた瞬間からコミュニケーションは始まっている 

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まだ言葉を発することのできない生まれたばかりの赤ちゃんでも、 このコミュニケーション方法は役立つそうです。 

ポイントは、 

(1)相槌を打つ 

(2)子どもの表情を言語化する 

(3)決め付けずに気持ちを代弁する ということ。  

表情を【見たままを決め付けず】表現すること、できているでしょうか? 例えば「〜ちゃん、怒っているね」ではなく「お母さん、怒っているように見えるな」ということです。 

例えば、子どもが何をしても泣きやまず、どうして欲しいかわからない時・・・ まだお話ができない子どもでも、共感され自分を認められることで、 子どもは満たされていくといいます。 分かり合えないことも認めることが大切だそう。 

 「〜ちゃん、何か悲しいんだね。何か嫌なことがあるんだね」 

「でもお母さん〜ちゃんがどうしてほしいかわからないよ」 

「でも泣きたいだけ泣いていいよ」 

「お母さん〜ちゃんが悲しくなくなるまで、付き合うよ」 

子どもが泣く原因は、お母さんにある訳ではありません。 子どもが【落ち着くのをサポート】するのが母の役目。 「私のせいで泣いている」とお母さんが不安になることで、子どもはより泣くといいます。 「泣き止んだら、〜してあげる」と言っても、子どもは泣きたい気持ちを認めてもらえていません。そういう伝え方では子どもには届きません。 とにかく「わかるよ。そうだよね」と、今の子どもの気持ちに寄り添って見て欲しいと思います。 

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◆子どもの気持ちを決め付けないで質問する 

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反抗期の子どもに対して 「なんでそんなにイライラしてるの?」と言っていませんか? 

そんなことを言われたら、大人も嫌ですよね。  

母「お母さん、〜くんがイライラしているように見える」(断定しない) 

母「そのイライラがなくなるお手伝いができるかな?」 

子「ほっといて」 

母「ほっといてほしいよね」 

 かけっこでお友達に比べて足が遅かった時・・・  

母「遅かったんだね。どんな気持ちだった?」 

子「うん、すごく嫌だった」 

母「嫌だったね、早く走るのって難しいもんね。どうやったら早く走れるようになるかな」 

子「練習する!」 

 子どもは【感情を認めてもらって手放せた時に、前に進める】そうです。 子どもが自分のことを客観的に見れるようにすると、 子どもが自分で答えを見つけて、自分で解決できるようになります。 親ができるのは、問題の解決のサポートだけなのです。 

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◆忙しい時の「抱っこ!抱っこ!」どうしてる? 

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抱っこしてほしい、その気持ちを受け止めるのも同じこと。 料理中など「今ちょっと手が離せないな」という場面ってありますよね。 その時「抱っこ!抱っこ!」とお願いされたらどうしますか?  

・早く次のことをしたいから「ハイハイ、抱っこね」と、とりあえず抱き上げながら片手で作業 

・「お母さん〜しなくちゃいけないの、だからちょっとだけ抱っこね」と次の予定を伝えて抱っこ 

こんな場面、ありませんか? 片手間では子どもが「抱っこしてほしい」という欲求は満たされていません。 きっと、ずっと抱っこしている状況になったり、またぐずったりの繰り返しになるのではないでしょうか。(我が家ではそうでした) 

そんな時は、まずは手を止めてください。 その子の気持ちが満たされるまで、抱きしめてあげてください。 そしたら「遊んでくる!」と子どもは次に進めるはずです。  

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◆「やらされている」を「やりたい」に変える 

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子どもは自分がやりたいと思って始めて立ち上がります。 

「リトミックに参加しても、全然お遊戯に参加しない」 

「端で座って見ているだけで、やりたいと言わず困っている」 

参加者から、そんなお悩みがありました。 「やらされている」から「やりたい!」に 気持ちが変わるために必要ことがあります。 それは・・・ 【この子は絶対いつかできるようになる!とお母さんが信じること】です。 体が動かすのが苦手な子どももいます。 でもその子がその場で「何もしていない」訳ではありません。 音を聞いています。 周りの踊っているお友達の様子を観察しています。 親が「参加している」と子どもを認めることで、 案外次の日あっけなく「やりたい」と言うものなのです。 

お母さんの覚悟が子どものやりたいを決めます。 是非お子さんを信じて見守ってください。 心からの信頼は必ず子どもに伝わります。 「信じてる」と言わずとも、子どもはその瞬間からガラっと変わっていきます。 

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◆親が自分を認めることで、初めて子どもを認められる 

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由佳子さんは「親自身がありのままの自分を認めることがとても大切」と、伝えてくれました。 ダメなことがあってもいい。 イライラしても怒ってしまうこともある。 そんな自分を受け入れることが、子どもを受け入れることにつながるそうです。 親になると、自分の感情を認めるのを忘れがちです。 「子どもを認められない・・・」そんな悩みをお持ちの方がいたら、 もしかすると自分を認めていないことが原因かもしれません。 

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◆ギャン泣きを25分間放っておいた私も受け入れる 

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由佳子さんの【ダメな自分を認める】体験のシェアがあったのですが 「由佳子さんでも、そんな経験があるのだ・・・」と、 子育てに取り組む皆さんの気が楽になるエピソードも紹介してくれました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

料理中、子どもがどうしても泣き止まない。 いつもは少し泣いていても時間が経てば寝たから、今日も寝るだろうと思って少し放っておいた。 でもずっと泣き止まない。 夫が帰宅し、ギャン泣きの娘を抱き上げた・・・ 結局、娘は25分泣いていた 

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という状況です。 もし同じような状況だった時、あなたなら自分にどんな言葉をかけますか? 「娘を最優先に出来ないなんて、なんてダメな母親だろう・・・」 と、思うでしょうか。 由佳子さんのその時の問いかけはこんなものでした。 

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「なぜ自分は、娘をほっておいたのだろう?」 →いつもは少し泣いていても、そのまま寝てくれていたから。 

「なぜ娘より料理が大切だったのだろう?」 「料理は後からではダメだったのか?」 →料理は、後でもよかった。 「なぜ娘をほっておいたのだろう?」 →私、一人の時間が欲しかったんだ・・・・ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

自問自答してたどり着いた自分の本心。 これは、【子どもにとって良いこと】でもなくていいと由佳子さんは言います。 そんな感情をもつ自分に気がつけたことで 由佳子さんは「じゃあ今からどう対応しようか」と気持ちを切り替えられ、 前を向くことができ、気が楽になったといいます。 【ギャン泣き25分ほっておいた自分を「まあいいか」と思える】こと。 それは親自身が「ありのままの自分」を認めるということ。 ダメなことがあってもいい、イライラして怒ってしまうこともある。 それは子どもをありのまま認めるということにつながっていくと思います。 この話を聞いて、私自身もとても楽になりました。 

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◆私も試してみました 

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私も、講義をうけた後に声かけを見直してみました。 

以前は、 

息子「オニギリが食べたい!」 

私 「いまはバスの中だから、後で食べようね」 

息子「いや!!食べたい!!」 と言っていたのが、 

息子「オニギリが食べたい!」 

私 「オニギリが食べたいんだね。でもいまはバスの中でご飯を食べる場所ではないから、バスを降りたら食べるのでもいい?」 

息子「うん、わかった」  

それは魔法のようでした。「あれ???」と拍子抜け。 不思議なくらい息子のオニギリへの執着が消え、彼は楽しそうに遊びだしました。 子どもは認められることをこんなにも求めていて、そうすることでこんなにも私の話にも耳を傾けてくれるのだと。 そして、これまで自分がしていたやりとりを反省しました。 まずはその気持ちを受け止め「あなたの気持ちは理解しているよ」と示すことが、これほどまでに大切なのだと、雷に打たれたような気分になりました。  

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◆結果が出るには、時間がかかります 

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しかし全ての状況で、すぐに結果が出るわけではありません。 由佳子さんは「子どもによっては、三ヶ月〜半年かかる子もいる」と話してくれました。 一貫して、伝え続けるのは根気がいります。 そして親としても、初めての試み。 これまでやっていなかった「ありのままを認める」声かけに慣れるまで、時間もかかります。 でも、その積み重ねをぜひ続けてほしいと思います。 子どもを信じて、声かけを続ければ必ず結果がでます。 私も夫と相談し、夫婦で協力して「ありのままを認める」コミュニケーションを続けること、そして、問題解決が自分でできるようになるまで、サポートをしていけたらと話し合いました。 まず親が変わることで初めて子どもが変わります。 「変化には時間がかかるもの」という前提で、子どもとのコミュニケーションを楽しんでもらえたらと思います。 

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◆自分の無知を認める大切さ 

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子どもの気持ちを「決め付け」て「誘導する」のではなく、 子どもを観察して「今どんな気持ちなのか」を代弁すること。 大人の役割は「答えを見つける」ことではなく 「解決のサポートをする」こと。 本やインターネットを見ていると 「子どもの感情を認めてあげることが大切」という話はよく目にします。 実際、私自身は「私は、子どもを認められている」と思っていました。 でも今回「なぜ認めることが大切なのか」「どうやって認めるのか」を由佳子さんから教えてもらったことで 私がやってきたことはほんの一部だったのだと、自分の無知を知ることができました。  

「子どもをありのままに認める」ということは、とても単純なようで、難しく時間がかかること。 でも、その積み重ねによって、我が子と心が通じ合い、どれだけ素敵な未来が待っているのかと思うと、私はとてもワクワクしました。 よく考えてみれば大人との会話でも同じこと。 子どもとのコミュニケーションを学ぶことを通じて、 私自身は大人同士のコミュニケーションも学んでいます。 親子でも夫婦でも、お互いに気持ち良い状態で、毎日を送るために「心が通じ合うコミュニケーション」が取る工夫をすれば、すべて解決の方向に向かいます。 由佳子さん、素晴らしいお話をありがとうございます。 ご参加いただいた皆様、たくさんのシェアがあったからこそ、学びや気づきがたくさんありました。 皆さんのお陰で素晴らしい時間となりました。ありがとうございました。 

Writer: Naoko Yasuda