2017年6月30日【子どもが愛されていると感じる働くママの接し方】について、シェアリングをおこないました。
今回のシェアリングを担当してくれたのは、6歳から鍵っ子で共働き家庭で育った岡 宏美 (Hiromi Oka)さん。
小学生の頃、自営業を始めた宏美さんのお母様は、土日関係なく朝から夜中まで不在。年子の妹さんと宏美さんは学童に通い、2人で帰り、ご飯を食べ、就寝するという生活だったそうです。
しかし、そんな生活にもかかわらず、
「両親が共働きで、よかった」
「仕事をする母に、誇りを持っていた」
「寂しいこともあったけど、それ以上に愛されていると思った」
「母のおかげで自分のことが大好き!」
と、語ってくれた宏美さん。
今回のシェアリングでは、宏美さんの幼少期を振り返り、お母様がしてくれたことを「子どもの目線」で語ってもらうことで 会える時間が短くても、自分の子どもが「愛されてる」と感じる接し方のヒントをお伝えいただきました。 宏美さんの伝えてくれたこと、一部ですがシェアしたいと思います。
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⚫️ 寂しくないように母がしてくれたこと
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(1)食事は必ず用意する
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私が寝る頃に帰ってきて母が必ずすることは、翌日の食事を作ること。 夜中に台所に立っている母の姿は今でも鮮明に覚えています。 どんなに疲れていても食事はきっちり一汁三菜を用意してくれていました。 たとえ会えなくても、言葉がなくても、手料理というのは何よりも愛情を感じるものだと思います。 そして何よりも食事を重要視する母の姿勢は、ただそれだけで食事の大切さが子供に伝わるものであり、私にとって最大の食育となりました。
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(2)交換日記でのコミュニケーション
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「お母さんともっとたくさん話がしたいのに・・・!」 という私の気持ちを汲んで、交換日記をしてくれました。 その日にあったこと、感じたことを毎日話せない分、交換日記に書きました。翌日、母の返事を見るのが何より楽しみで、たとえ文字でも会話ができることが嬉しかったです。私と母だけの世界でした。 もし、顔を合わせて話していても、母が上の空なのだったら、いっそ交換日記の方がいいとさえ思いました。
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(3)口を出さず観察する
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母の仕事がない日など、一緒に居られる時の母は、徹底的に私たちの様子を見ていました。 私に何か悩みがあったり、寂しさの我慢が限界だったり・・・ 私の変わった様子にいち早く気づくのはやっぱりいつも母でした。 また、「◯◯しなさいって言ってるでしょ」といった、いわゆる躾のようなことも一切言いませんでした。 やっと会えた楽しい時にこのようなことを言われたら、きっと私は「いつもほとんどいないくせに」と理不尽に感じただろうと思います。 普段子供の様子を見ることができないからこそ、頭ごなしに躾をするのは違うように思います。
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(4)一生懸命仕事をする背中を見せる
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母は愚痴をこぼさず、一生懸命仕事をしていました。 もし母が家で仕事の愚痴を言ったり、適当にこなしていたら 「そんな嫌な仕事のために私が寂しい思いをするの?」 「嫌なら辞めて側にいてよ」 と、母が働くことに「納得」できなかったかもしれません。
母がやりたいことだから、母の夢だから、と思って、 母が働くことを理解しているのに、それがイヤイヤやっていると知ったら納得出来なかったと思います。 母は、愚痴も言わず、一生懸命働く姿を見せてくれました。 子供は親が思う以上に親を見ているし、状況を理解しています。会える時間が少なければ寂しい思いを少なからずするのは当然です。 でも、それでも理解して納得して、そしてママを応援しよう、と思えたら、例え寂しいと思うことがあっても、それは「ママに愛されていない」寂しさでは決してないはずです。
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⚫️ 母からの忘れられない言葉とエピソード
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(1)「だって、あなたを信じてるから」
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高校生の頃、母が出張で帰ってこない日に無断外泊をしたことがありました。
当時のアルバイト先の大学生に、飲み会に誘われたのです。 興味を抑えられず参加しました。帰ってこないのだからバレないだろうと。 しかし翌日あっけなくバレてしまい、私は怒られる!といろいろな言い訳や嘘を考えていました。 でも、母は私に何も聞かず、何も言わないのです。あまりに普通に振る舞うので不安になり、震えながら「どうして何も聞かないの」と尋ねました。 すると母は一言、笑顔でこういったのです。
「だって、あなたを信じてるから。」
私にとっては怒られるよりもショックなことでした。 母はこんなにも私を信じてくれているのに、私はそれを裏切ったのだ、と。 もちろん私の無断外泊を知って母は不安や怒りを感じたはずです。 でも、信じているから何も聞かない、と言ってくれた。 その母の思いに応えられる自分でいなくては、と心に誓いました。 親の信頼を平気で裏切れる子供はいません。 何があっても、全力で自分の子供を信じること。会えない時間が多いからこそ、伝えてほしい母の想いだと思います。
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(2)「あなたがいるだけで、お母さんは頑張れる」
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母が仕事から帰ってきた時、玄関まで駆けていって「おかえりなさい!」と笑顔で出迎えました。
すると母は、疲れた顔から嬉しそうな顔に変わって、そして「あなたのおかげでお母さんは頑張れるよ!」とよく言ってくれました。
それは私が寂しいのを我慢してお留守番をしてくれるから、ではありません。それは、「ただ、あなたがいるだけで、それだけで頑張れるよ」という母の気持ちでした。
母は子供という愛しい存在を糧にして、自分の人生を頑張っている。
私という存在があるだけで母は頑張れるんだ!というのが、はっきりと伝わりました。
そしてそれは同時に、母は働いている時も私のことを想っている、ということがわかる言葉でした
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⚫️ どうしたら「自分が大好き」といえる自己肯定感の強い子どもに育つのか
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(1)存在を認めて感謝すること
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先ほどの「あなたがいてくれるおかげ」という言葉も自己肯定感を育む言葉だと感じています。 「あなたのため」と「あなたのおかげ」は似ているようで、全く違う言葉です。 「あなたのために仕事をしてる」と言われると「私のせいでお母さんは働かなければいけない」と感じる可能性がある、気をつけて発信したい言葉です。 成果や結果や根拠が何もなくても、ただいてくれるだけでありがたいよ、と親が子供の存在そのものを認めて感謝すること、それが大きな自己肯定につながります。
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(2)自分のことは、自分でやる
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仕事で忙しく、母は家事をする時間があまりなかったので「手伝ってくれる?」といつも私に家事を手伝わせました。 料理、洗濯、掃除、洗い物、買い出し・・・。 細かいやり方を指導されることもなく、見よう見まねで手伝っているうちに、自然と母がいない時に自分からやるようになりました。 どうして自主的に手伝いをしたのか考えると、決して「やっておいて」とか「やりなさい」と言われなかったから。 そして帰ってきた母が「やっておいてくれたの。ありがとう!」と言ってくれるからでした。
そして少し失敗していても絶対に怒ったり指摘したりしませんでした。 言われたからやるのではなく、家庭の中での自分の仕事を自分で見つけて実行する、というプロセスは家事労働の醍醐味であり、本来の姿だと思います。 「◯◯しなさい」という言葉を使わずに、子供が自ら気づくのを待つ、という姿勢が、ゆっくりでも確実に自主性と自己肯定を育むと思います。 (家事労働率が高い子どもの方が、体も心も健全に育つといわれています)
例えば、私は一度も「勉強しなさい」とか「宿題したの?」と言われたことがありません。 「言わないとやらないだろう」と思うかもしれませんが、自主的に宿題をやらなければ先生に怒られますし、自主的に勉強しなければ将来も不安になります。親は「やれ」と言ってくれません。 自分で考え、自分で動く。「自分でできた!」という達成感。 それを失敗しながらでも何度も何度も日常的に経験させてくれたこと。 その一つ一つが私の揺るぎない自己肯定感につながっていると思います。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここまで読んで、どんな感想をもったでしょうか。 宏美さんのお母様の並々ならぬ決意と努力が伝わってくると思います。 そして、素晴らしいヒントがいくつも詰まっていました。
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◆子どもはずっと母親に傍にいて欲しい訳ではない
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親がいなくて平気な子どもなんていません。 でも、会えない寂しさを感じるのって実は一瞬だったりします。 宏美さんもお母様に「もっと早く帰って来られないの?」と聞いたことがあるそうです。 「じゃあ仕事辞めて、ずっと側にいてあげようか?」と聞かれて、宏美さんは「それはイヤだ」と答えたそうです。 子どもは実は「母親にずっと側にいてほしい」なんて思っていないのかもしれません。
どんなに小さくても自我があって、意志があって、やりたいことや夢があります。 その夢に必ずしも親が一緒とは限りません。 2歳の私の息子も、一人遊びをしている時は「お母さんはあっちにいってて!」ということもあります。 それと同じように、子供は母親にも自分のやりたいことに挑戦してほしい、夢を持って輝いてほしい、と思っています。 宏美さんも迷いなく自分のやりたいことに取り組み、夢を語り、笑顔で「いってきます!」と仕事へ向かう母親を望みました。 だから「仕事を辞めないで」と言ったのだと話してくれました。
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◆働くことに罪悪感を感じないでほしい
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宏美さんが共働きのお母さんに伝えたいこと。
それは【働くことに罪悪感を感じないでほしい】ということ。
「寂しい思いをさせてごめんね」 なんて子供に言わないで、 「あなたのおかげでお母さん仕事頑張れるよ、ありがとう!」 と伝えてあげてください。 そして子供にも子供のやりたいことを思いっきりやらせてあげるということ。 子供は「自分が親に愛されている」という確信さえあれば、ずっと側にいなくても平気なものです。 ずっと側にいたって食事がカップラーメンだったら愛情は感じられませんが、手料理が用意されていたら母親が家にいなくても愛情を感じます。 24時間一緒にいたってまともに話を聞いてくれなければ愛情は感じられません。でも、帰りが遅くても、5分でもしっかり話を聞いてくれたら愛情を感じます。 子供への愛情や思いは、過ごした時間の長さでは測れない。そう思うのです。 いつかは旅立つ我が子のためにも、自分の人生をまっすぐ生きる、一生懸命生きる、夢を持って生きる、誇りを持って生きる。 そんな両親のたくましい姿を見せてあげてほしい。私は働くママたちに誇りと自信を持ってほしいと心から願っています。
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◆子どもは言わなくても、全部わかっている
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また、このシェアリングを開催する前日に、宏美さんのお母様へ「どんな思いで私を育てたの?」と質問をしたそうです。 すると・・・今回宏美さんがシェアしてくれたこと、そのものの内容が返ってきたそうです。 つまり、お母さんが信じてやってきたことは全て宏美さんに届いていたということ。 「『信じている』と言わなくても、信じていることは伝わる」というのは本当にそうだと思います。 ----------------
◆幼少期の思いを振り返って見えてくるもの
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今回は宏美さんが、涙を流しながら伝えてくれたおかげもあって、その話にもらい泣きをしたり、自分の心と対話しながら涙を浮かべるメンバーもいました。 そして宏美さんのお話を踏まえ、参加したメンバー全員で「お母さんに言われて嬉しかったこと」をシェアする時間を作りました。
「こうしてくれて本当に嬉しかった」という思いもあり、それとは反対に「本当はこうして欲しかった」という思いもありました。 宏美さんが本気で伝えてくれたからこそ「ここでは本音で伝えて大丈夫」という安心感もあり、当時を振り返りながら、葛藤・喜び・安堵の気持ちなど、それぞれが想いを熱く語ってくれました。 涙無くしては語れませんでした・・・・・
今回想定していなかったプレゼントは、幼少期の記憶を振り返ったことで、自分の中にいる「子どもである自分(inner child)」を癒すことができたこと。 「これからどうやって子どもに愛していると伝えていけばいいのだろう?」という前に、 まずは「自分がどんな風に愛されていたか」を知ることはとても大事なこと。 「本当はこんな風にして欲しかった」という思いはあったとしても、当時の自分のお母さんも、愛して悩んで出した答えだったはず。 宏美さんがお母様に言われた言葉のひとつに 【自分の愛されたい方法で愛してもらった子どもはいない】 というものがあったそうです。 別の人間同士だからこそ、分かり合えないこともあるし、自分がいいと思っても我が子がそれをいいとは思わないこともある。 それでも今、私たちが我が子をこんなに愛して悩んで毎日を過ごしているのと同じようにしてくれていたはずなのです。 幼い頃に抱いていたお母さんへの思いを振り返ることは、どれだけお母さんに愛されていたのかを確認するのにつながります。 そしてそれを皆とシェアすることで、「反面教師にする」としか割り切れなかったお母さんの許せない部分を、許せる時間になりました。
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◆母親がやりたいことをやる背中を見せる
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ここまで宏美さんのシェアと私が感じたことを中心にお伝えしてきましたが、 私の個人の考えもお伝えできればと思います。
各家庭にそれぞれ事情はあると思いますし、いろいろな考えがあると思いますが、 私は「母親がやりたいことをやる」ということが、家族の絆を強める、夫婦関係を良くし、家族が仲良くいられる秘訣だと思っています。
「働くこと」を考えた時に、「やりたいこと」という軸よりも、時間・経済的な理由を先に考えているお母さんがとても多いように感じています。 それを否定するつもりはありません。 でもあなたの人生は誰のものでもなく、あなたのもの。 自分自身にとって本当にやりたいことをどうやったら実現できるのか、母親という役割だからこそ、考えてみてほしいと思っています。
子どもが求めているのは、「お母さん自身が一生懸命に自分の人生を楽しんでいること」であり、いつもべったりと一緒にいることではありません。 「勉強しなさい」というより、勉強する姿を見せる方がよっぽど子どもには響くように、 「お友達に優しくしなさい」というより、優しい気遣いのあるやりとりを見せる方が子どもに納得してもらえるように、 「子どもにどんな人生を送ってほしいか?」は、自分自身が背中で示すしかありません。 私は息子に「自分の人生を自分の力で切り開き、一生懸命に、チャレンジできる」そんな人間に育ってほしいと思っています。 だからこそ、私はその背中を息子に見せていきたい、そう思って、このコミュニティーの活動もしています。 「お母さんのお仕事、こんなにすごいんだよ!」 子どもに自慢したくなるような自分でいれたらと思っています。 ちょっと時間をつくって、 「子どもにどんな人生を歩んで欲しいか」 「その背中を見せる行き方ができているか」 是非考えてみてください。
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◆母親という役割だからこそ、学ぶ意味がある
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最後に・・・ 宏美さんのお母様は、仕事をしながらも、食や子育てに関するセミナーや講演会、勉強会などによく出向いていたそうです。 共働きしながら「どうやって子育てをしていくべきか」についても、 そういった場で学び、自分なりに考え、実践していたそうです。
このMothers’ Earth Communityもまさにそんな学びができる場所。
限りある時間ですが、『学ぶ』ことにその自分の時間を費やすことは、自分のためにも家族のためにも良いことである、と思っています。
宏美さんのお母様がしてくれたことの実体験シェア。
これをヒントに、これからたくさんの働くお母さんが、誇りと自信を持って働く姿を、子供たちに見せてあげてほしいと思っています。
今回のシェアリングは、宏美さんと私の想いも重なり、とても長いものとなりました。長文お付き合いくださりありがとうございます。
参加してくれたメンバーの皆さんのおかげで、とても濃い時間となりました。
宏美さん、皆さん、ありがとうございました!
Writer : Naoko Yasuda
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